最高裁判所第一小法廷 平成10年(オ)528号 判決 2000年9月07日
①事件
上告人
甲野太郎
外三名
右上告人ら訴訟代理人弁護士
原田香留夫
同
津川博昭
同
木村清志
同
中西裕人
同
横内勝次
右上告人ら(甲野太郎を除く)訴訟代理人弁護士
鬼追明夫
同
山下潔
同
小坂井久
同
海渡雄一
同
小橋るり
右上告人ら(戸田勝を除く)訴訟代理人弁護士
戸田勝
右上告人ら(木下準一を除く)訴訟代理人弁護士
木下準一
右上告人ら(金子武嗣を除く)訴訟代理人弁護士
金子武嗣
被上告人
国
右代表者法務大臣
保岡興治
右指定代理人
山崎潮
外一二名
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
一 上告人兼上告代理人戸田勝、同木下準一、同金子武嗣、上告代理人原田香留夫、同津川博昭、同木村清志、同中西裕人、同横内勝次の上告理由第一点について
接見時間を三〇分以内と定めた監獄法施行規則(以下「規則」という。)一二一条本文の規定及び接見には監獄職員の立会いを要する旨を定めた規則一二七条一項本文の規定が憲法一三条及び三二条に違反するものでないことは、最高裁昭和四〇年(オ)第一四二五号同四五年九月一六日大法廷判決・民集二四巻一〇号一四一〇頁、最高裁昭和五二年(オ)第九二七号同五八年六月二二日大法廷判決・民集三七巻五号七九三頁、最高裁昭和二三年(れ)第二八一号同二五年二月一日大法廷判決・刑集四巻二号八八頁の趣旨に徴して明らかである。また、右各規定が、市民的及び政治的権利に関する国際規約一四条に違反すると解することもできない。右と同旨の原審の判断は、是認することができる。所論引用の判例は事案を異にし本件に適切でない。論旨は採用することができない。
二 同第二点について
1 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができる。これによれば、本件の事実関係は次のとおりである。(一) 上告人甲野太郎は、平成二年四月二六日から徳島刑務所において懲役刑の執行を受けている受刑者であり、平成二年四月、国を被告として、徳島刑務所に移監される前に拘禁されていた大阪拘置所において、重篤な疾病が疑われる様々な症状が現われていたのに、精密検査を受診させなかった拘置所側の措置の違法を主張して国家賠償請求訴訟(大阪地裁平成二年(ワ)第三〇五四号。以下「大阪事件」という。)を提起し、同年八月には、国を被告として、徳島刑務所の管理部保安課職員から暴行を受けたり、身体的に苦痛を伴う無理な姿勢を強制されたりし、また、いわれのない懲罰処分を受けたと主張して国家賠償請求訴訟(徳島地裁平成二年(ワ)第三三二号。以下「徳島事件」という。)を提起した。(二) 上告人戸田勝、同木下準一、同金子武嗣は、いずれも弁護士であり、大阪事件及び徳島事件における上告人甲野の訴訟代理人である。徳島事件の訴訟代理人には、外に、津川博昭弁護士及び木村清志弁護士がいた(右弁護士らを、以下「上告人弁護士ら」という。)。(三) 上告人弁護士らは、平成二年一〇月三一日から平成三年一一月一五日にかけて、大阪事件や徳島事件等の打合せ等のために、後記(四)の接見日における上告人甲野との各回いずれも三〇分を超える時間の、かつ、刑務所職員の立会いなしの接見の許可を求めたが、徳島刑務所長(以下「所長」という。)は、いずれも保安課職員の立会いと接見時間を三〇分以内とするとの条件を付してこれを許可した。(四) 上告人弁護士らは、右条件に従って、(1) 平成二年一一月七日、(2) 同月二〇日、(3) 平成三年一月九日、(4) 同月三〇日、(5) 同年三月二〇日、(6) 同年五月二九日、(7) 同年一〇月二日、(8)同年一一月二〇日に上告人甲野と接見した(以下「本件接見(1)」などという。)。(五) 本件接見(3)ないし(8)は、申請された接見の内容からすると、三〇分を超える接見時間を必要とするものとは認められない。(六) 本件接見(1)、(2)及び(4)ないし(8)は、申請された接見の内容からすると、徳島事件とは無関係な打合せ(本件接見(2))であるか、徳島事件に関するものであっても事実の調査にわたらない単なる打合せや口頭弁論期日の経過説明を内容とするものである。(七) 上告人甲野は、大阪拘置所在監時から腰痛があるとか、自力で歩行できないなどと訴え、徳島刑務所に移監された後は、客観的にはそのような障害の事実が認め難いにもかかわらず、正常な姿勢で座れないなどと主張して、居房内において床に寝ころぶような姿勢を長時間にわたって続け、また、職員に対して反抗的な態度を継続してたびたび懲罰処分を受けていた。
2 上告人らは、原審が本件接見(3)ないし(8)について接見時間を三〇分以内とした処分並びに本件接見(1)、(2)及び(4)ないし(8)について保安課職員を立ち会わせることとした処分を違法ではないと判断したことを論難する。しかし、右事実関係の下においては、前者に関し、規則一二一条本文の規定により接見時間を三〇分以内に制限した所長の処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものという余地はなく、また、後者に関し、上告人甲野の性向、行状にかんがみると、接見時における不測の事故を防止するため、あるいは、上告人甲野の動静を把握してその処遇に資するために、刑務所職員を接見に立ち会わせる必要は大きかったものというべきであるから、規則一二七条一項本文の規定により刑務所職員の立会いを条件とした所長の各処分は、社会通念上著しく妥当を欠くものとはいえず、所長の裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。以上と同旨の原審の判断は、是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って若しくは原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。
三 同第三点について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って若しくは原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず、採用することができない。
よって、判示二について裁判官遠藤光男の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
判示二についての裁判官遠藤光男の反対意見は、次のとおりである。
原判決は、本件接見(1)及び(2)につき刑務所職員の立会いを条件とした処分、本件接見(3)につき接見時間を三〇分以内に制限した処分、本件接見(4)ないし(8)につき接見時間を三〇分以内とし、かつ、刑務所職員の立会いを条件とした処分をいずれも適法と判断したが、私は、多数意見とはその見解を異にし、原判決には法令の解釈を誤った違法があるので破棄されるべきものと考える。
一 監獄法(以下「法」という。)四五条二項本文が受刑者につき親族以外との接見を禁止し、規則が、受刑者を含む在監者一般につき接見時間を三〇分以内(一二一条本文)、接見度数を一定回数(懲役受刑者については一箇月一回。一二三条本文)に制限し、接見につき刑務所職員の立会いを条件(一二七条一項本文)としたことは、受刑者がその身柄を拘束されている目的及び行刑施設としての物的、人的制約等からみて十分その合理性が認められるところである。
二 しかしながら、右各規定は、いずれも原則的なものにとどまるのであって、特に必要があると認められる場合には親族以外の者との接見が認められ(法四五条二項ただし書)、接見時間、接見度数及び立会い等に関する接見条件についても、処遇上又は教化上その他の必要があると認められるときには、これを解除することができる旨定められている(規則一二四条、一二七条三項)のであるから、受刑者と受刑者を当事者とする民事訴訟事件関係人、とりわけ当該事件の訴訟代理人である弁護士との接見については、受刑者の管理に当たる刑務所長としては、右接見目的の重要性にかんがみ、前記各制限を解除するか否かについての裁量権の行使に当たっては、右接見の必要性を十分考慮してその可否を判断する必要があるものというべきである。けだし、受刑者に対しても、憲法三二条が定める裁判を受ける権利が保障されていることはいうまでもないところ、この権利は、すべての者が公平な裁判所の裁判を受ける権利を有し、裁判所は適式な訴えの提起に対して裁判を拒否することが許されないことを保障したにとどまるものであって、受刑者と受刑者を当事者とする民事訴訟事件関係人との接見を無条件で保障したものではないが、公平な裁判所の裁判を受ける権利が保障されたものである以上、事実上、公平な裁判を受ける権利を阻害するおそれが生ずることのないよう十分考慮されなければならないからである。
三 そして、刑務所長が前記各制限を解除するか否かを判断するに当たっては、特に次の点に留意する必要がある。すなわち、受刑者が在監中に民事訴訟を提起した場合、その訴えが明らかに濫訴と認められる場合はともかくとして、通常の民事訴訟においては、相手方当事者からの反論やその立証活動に応じて、その都度、事前に相当の準備をしておかなければ、訴訟手続の進行に適切に対応することができず、訴訟の目的を達成することができないことは公知の事実である。また、事件の内容及び訴訟手続の進行状況いかんによっては、当該訴訟事件の代理人である弁護士との間にかなり長時間の打合せを必要とすることは決して珍しいことではない。とりわけ、争点についての主要事実を端的に証明することのできる直接証拠が乏しい場合には、ときによっては、微妙な点にわたる数多くの間接事実の存在を主張し、かつ、これを立証することによって主要事実の存在を証明していかざるを得ないことになるが、これらの点に関する主張、立証が差し迫っている場合には、長時間かつ何回にもわたる打合せを必要とする場合が少なくなく、信書の交換などによりこれに代えるということは到底困難というべきである。また、事件の性質、内容のいかんによっては、その打合せ内容を相手方関係者に察知されることがないよう秘密裡に行わなければならない場合があり得るところである。
これらの事情に基づく接見条件の解除の必要性が社会通念からみて十分肯定されるにもかかわらず、合理的な理由なしにその解除を認めなかった場合には、裁量権を逸脱し、又は濫用したものとして当該処分の違法性が認められるものというべきである。
四 また、受刑者と受刑者を当事者とする民事訴訟事件関係人との接見に際し、一箇月につき一回を超え、又は一回につき三〇分を超える接見、刑務所職員の立会いのない接見の許可を申請する場合には、いずれも申請者において、その必要性を具体的に明らかにしなければならないものと解すべきところ、刑務所長が、あらかじめ右のような具体的必要性の説明を受けることを拒否し、申請者に右説明を行うことを許さなかった場合には、刑務所長のした処分はその裁量的判断に当たって考慮すべき重要な事情を考慮しないでされたものというほかはなく、前述した接見目的の重要性にかんがみると、その手続には違法の瑕疵があるというべきである。
五 これを本件について見るに、本件接見(1)、(4)ないし(7)はいずれも徳島事件及び大阪事件等に関する打合せ等を、本件接見(2)は大阪事件等、本件接見(3)及び(8)は徳島事件等に関する各打合せ等を目的とするものであるところ、徳島事件は、上告人甲野が徳島刑務所に収監された平成二年四月から同年七月に至るまでの約三箇月の間、同刑務所職員から多数回にわたり殴る、蹴る、頭突きをされる、顔面や首、背部腰部等をコンクリート壁に押しつけられる等の暴行を加えられたことを請求原因とする国家賠償請求事件であるから、実質上の被告は徳島刑務所自身とみてよい。いかに、受刑者がその身柄を拘束されている目的及び行刑施設としての物的、人的制約等を考慮しなければならないとしても、このような事件についての打合せを実質上の相手方ともいうべき徳島刑務所の職員の監視の下で行わせるということは、誰の目から見ても余りにも不公平であることは明らかであり、これを容認するとすれば、公正な裁判を受けさせるという理念は完全に没却されてしまうことになる。さらに、記録によれば、徳島事件は上告人甲野の身体上の障害、病状を詐病と疑う刑務所側の対応に起因して発生した一連の出来事であると主張されており、大阪事件の内容はこれと密接な関係を有するものであり、かつ、被告がいずれも国とされているところからすると、大阪事件についての打合せ(本件接見(2))についても、右と同様に解すべきである。また、徳島事件、大阪事件とも、右各事件の被告である被上告人が上告人甲野の主張を全面的に争っている以上、訴訟手続の進行に応じて、その都度かなり長時間を要する打合せを必要としたであろうことも容易に推測し得るところである。
そして、本件接見(1)ないし(4)については、上告人弁護士らは、接見許可の申請に当たり、右各接見が徳島事件や大阪事件等に関する打合せ等を内容とするものであること及び刑務所職員の立会いがあると打合せに支障が生ずることを具体的に明らかにして、立会いのない接見を求めるとともに、接見には三〇分を超える時間を要する旨も明示していたと解されるから、本件接見(1)及び(2)について立会いを、本件接見(3)について時間制限を、また、本件接見(4)について時間制限及び立会いをそれぞれ解除せず、これを接見の条件とした所長の処分は裁量権を逸脱し、又は濫用したものとして違法というべきである。
また、原審の適法に確定した事実関係によれば、徳島刑務所側は、平成二年七月ころ、上告人弁護士らに対し、上告人甲野と同人を当事者とする民事訴訟事件の代理人弁護士との接見については、あらかじめ月二回、一回の接見時間三〇分以内、刑務所職員の立会いの下においてのみこれを認める旨を告げたため、上告人弁護士らは、三〇分という接見時間では事件の打合せがまったくできないこと、徳島事件は徳島刑務所自身が実質上の被告とするものであるから、同刑務所の職員の立会いの下での打合せは、その公正性を阻害するものであることなどを理由として、接見時間及び立会いに関する接見条件を解除するよう強く求めるとともに、本件接見(4)までは、面会許可申請書にもその旨を具体的に記載していたが、徳島刑務所側から、「今後、面会許可申請書に三〇分を超える接見時間と立会なしという要望は記載しないで欲しい。記載した場合は、それだけで接見を許可しない。」旨が告知されたため、本件接見(5)以降の面会許可申請書には、これを記載することができなかった、というのである。そうだとすれば、このような徳島刑務所側の対応は、上告人弁護士らが具体的必要性を明らかにして接見条件の解除を求めることを事前に拒否したものといわざるを得ない。したがって、本件接見(5)から(8)についてされた条件付きの接見許可処分は、その手続に瑕疵があり、違法なものといわざるを得ない。
六 以上と異なる原判決の判断は、法令の解釈を誤った違法があり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判決のうち、本件接見(1)及び(2)につき刑務所職員の立会いを条件とした処分、本件接見(3)につき接見時間を三〇分以内に制限した処分、本件接見(4)ないし(8)につき接見時間を三〇分以内とし、かつ、刑務所職員の立会いを条件とした処分を適法とした部分は破棄を免れず、上告人らが被った損害額を審理するため、右部分につき本件を原審に差し戻すべきである。
(裁判長裁判官大出峻郎 裁判官遠藤光男 裁判官井嶋一友 裁判官藤井正雄 裁判官町田顯)
上告人兼上告代理人戸田勝、同木下準一、同金子武嗣、上告代理人原田香留夫、同津川博昭、同木村清志、同中西裕人、同横内勝次の上告理由
<省略>
第二、監獄法及び同法施行規則と、憲法に違反国際人権規約自由権規約(以下B規約という)に違反について(第一点)
原判決は、監獄法及び同法施行規則(以下規則という)一二七条一項、同法一二一条について、憲法三二条、同法一三条違反、B規約一四条一項の違反を認めなかった。
一、原判決の監獄法及び同法施行規則一二一条、一二七条一項の解釈について
原判決は、
「受刑者と弁護士との接見に関する監獄法及び同法施行規則の解釈も、受刑者の接見の権利を保障するB規約一四条一項及び憲法の趣旨に則ってなされなければならない。」
とする。この点は当然である。
ところが原判決は、
「監獄法施行規則一二一条「接見ノ時間ハ三〇分以内トス但弁護人トノ接見ハ此限ニ在ラス」及び同規則法一二七条一項「接見ニハ監獄官吏之ニ立会フ可シ但刑事被告人ト弁護人トノ接見ハ比限ニ在ラス」について検討するに、文言上、右規則中の「弁護人」は刑事被告人の弁護人を指すものと解されており、これに民事事件の訴訟代理人たる弁護士を含むものと解することはできないが、前記のとおり、B規約一四条一項の定める裁判を受ける権利及び憲法上認められる受刑者の接見の権利が接見時間及び刑務官立会いの許否についてはなお一義的に明確とはいえないこと、監獄法施行規則一二四条及び一二七条三項が、刑務所長が必要と認めたときは三〇分という時間制限を付さないこと、接見に立会いを付さないことができると定めていることからすると、右規則一二一条、一二七条一項が直ちにB規約一四条一項等に反して無効であるとまでいい難い。」
と判断した。
二、しかしながら、規則一二一条、一二七条一項は、憲法三二条、一三条そして憲法の人権保障の趣旨とB規約一四条一項に違反し、また判例違反するものである。
憲法三二条、一三条、憲法の人権保障の趣旨、B規約一四条一項は、前記のとおり、受刑者と弁護士との時間制限のない、そして刑務官立会のない接見を認めたものである。
また、最高裁は、平成三年七月九日の判決(民集四五巻六号一〇四九頁)で一四才未満の接見を認めなかった監獄法施行規則一二〇条、そして例外を認めなかった規則一二四条について
「規則一二〇条は原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないこととし、一方、規則一二四条はその例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしている。しかし、これらの規定は、たとえ事物を弁別する能力の未発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって、法五〇条の委任の範囲を超える。
原審は、規則一二〇条及び一二四条について限定解釈をした上、これらの規定が法五〇条の委任の範囲を超え、無効であるということはできないとした。しかし、被勾留者も当該拘禁関係に伴う一定の制約の範囲外においては原則として一般市民としての自由を保障され、幼年者の心情の保護は元来その監護に当たる親権者等が配慮すべき事柄であるから、法が一律に幼年者と被勾留者との接見を禁止することを容認していると解することは、困難である。そうすると、規則一二〇条及び一二四条は、原審のように限定解釈をしたとしても、なお法五〇条の委任の範囲を超え、無効である。
そうだとすれば、規則一二〇条及び一二四条は、結局、被勾留者と幼年者との接見を許さないとする限度において、法五〇条の委任の範囲を超え、無効である。」
と認定したのである。
まさしく本件においても同様である。
そもそも規則一二一条、一二七条一項は法律によらずに、一律に受刑者と弁護士との接見を制限するものに外ならない。
ましてや、一二一条、一二七条一項は一律に時間を制限し、刑務官の立会を付する規定なのである。監獄法五〇条は、このような委任を認めたものではないことは前記最高裁判例のとおりである。最高裁判例は、規則一二一条の刑務官立会の例外規定の一二四条、時間制限の規則一二七条一項例外規定の同条三項があったとしても、法が一律に接見を制限することを容認していると解することは困難であるとしたものなのである。
まさしく、憲法の人権保障の趣旨、B規約一四条右最高裁判例の趣旨からみても、原判決の認定のように規則一二四条、一二七条第三項のいずれの例外規定が存在し、それによって限定解釈がなされたとしても、監獄法五〇条の委任の範囲をこえていることは明らかである。
原判決には、この点において憲法違反、判決の影響を及ぼす法令違反、判例違反がある。
<省略>